カテゴリー「小説」の記事

2012年1月17日 (火曜日)

故 佐藤泰志の作品 映画化第2弾「そこのみにて光輝く」函館の有志ら企画(2012.1.15 北海道新聞朝刊)

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 【函館】函館出身の作家佐藤泰志(1949〜90年)の小説「そこのみにて光輝く」が地元有志らの企画で映画化されることになった。佐藤作品の映画化は2010年公開の「海炭市叙景」に次いで2作目。来年の公開を目指す。監督の人選などは調整中だが、企画スタッフは「美しい夏の函館を舞台に佐藤泰志の世界を描きたい」と意気込んでいる。
 「そこのみにて—」は89年刊行の長編小説。函館がモデルの夏の港町を舞台に、青年たちの出会いや恋、波乱のある生活を硬質な文章で描く。昨年春、河出文庫で復刊された。
 映画化は、「海炭市叙景」の製作実行委員会メンバーらが発案した。海炭市叙景がキネマ旬報の日本映画ベストテンで9位に輝いたほか、観客動員5万人、興行収入6千万円の好成績を上げたことも後押しとなった。
 著作権を継承した遺族や、版元の河出書房新社も了承。現在、出資企業など製作の枠組みを最終調整中だが、今春をめどに監督や出演者を決定。早ければ今年7〜9月に函館でロケをする予定だ。
 前作の製作実行委員長で、今回はプロデューサーを務める菅原和博さん(函館)は「夏の函館が舞台の本作は、冬が舞台の海炭市叙景と対をなす作品。前作同様ふるさとの人たちの協力を得て完成させたい」と話している。
(写真:「そこのみにて光輝く」が映画化される佐藤泰志=1989年夏)

映画「海炭市叙景」公式サイト
http://www.kaitanshi.com/
そこのみにて光輝く (河出文庫) [文庫](Amazon.co.jp)
http://amzn.to/w0F3r4
佐藤泰志 作品一覧 (Amazon.co.jp)
http://amzn.to/ynhah7
佐藤泰志 (Wikipedia)
http://bit.ly/w28YBF

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2011年7月 9日 (土曜日)

さようなら福村書店。ありがとう福村書店。(北見市)

福村書店 破産申請へ
北見の老舗 負債5.6億円

【北見】北見の書籍販売の老舗、福村書店(下斗米ミチ社長)は6日、事業を停止し、事後処理を弁護士に一任した。近く釧路地裁北見支部に自己破産を申請する。信用調査会社の東亜リサーチ(北見)によると、負債総額は約5億6千万円の見込み。(関連記事31面)
 東亜リサーチなどによると同社は1947年創業、60年に法人化。一時は北見のほか札幌などにも支店を出したほか、北見市内42小中学校のうち20校分の教科書も取り扱っていた。92年7月期の売上高は15億9500万円だったが、店舗拡大による経費増や大手古書店の進出、雑誌を扱うコンビニエンスストアの増加などで業績が悪化。2010年7月期には4億9300万円まで落ち込んでいた。
 福村書店は下斗米社長が先代社長で夫の茂気さん(故人)とともに創業した。地元作家の作品や文芸誌のコーナーを設けたり、公共施設に絵画を寄贈するなど文化活動にも積極的にかかわってきた。
 北見市の店舗「北の書籍館」は5日の営業を最後に閉じたが、別の業者が女満別空港で運営するテナント店には連絡がなく、6日は営業した。

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福村書店が事業停止
文化発信の拠点が…
北見「ショック」老舗惜しむ声


 「北見の文化発信の拠点だったのに—」。1947年創業の北見市の老舗書店「福村書店」が事業停止となった6日、同市内美芳町にある店舗「北の書籍館」を訪れた市民や文化関係者からは驚きと閉店を惜しむ声が聞かれた。

市教委 教科書の扱い先懸念

 同店舗には同日、2カ所の出入り口に閉店を知らせる張り紙が張り出された。突然の閉店を知らずに店を訪れた市民も多く、張り紙を見て一様に驚いた様子だった。昔から利用していたという会社員坂東正行さん(62)は「本は必ずここで買っていた。本離れの影響だろうか。とにかくショック」と言葉少な。アルバイト矢口誠さん(32)も「専門書が充実していた。店員さんの本を選ぶセンスはほかの店にまねできないと思う」と惜しんだ。近くにあるスーパーの男性店員(51)は「閉店はこちらの売り上げにも間違いなく影響するだろう」と寂しそうにつぶやいた。
 同店は、「文芸北見」や「北見叢書(そうしょ)」など地域の書籍を取り扱ったり、地元ゆかりの作家コーナーを設けるなど北見文化を発信する役割も担ってきた。文芸北見を発刊する北見文化連盟の平野温美会長は「書店は街の文化的なステータスでもあり、老舗書店の閉店は本当に残念」と話した。
 同店に勤務し、2009年に旧本店跡に「ブックキャビン」(北3西2)を開店した高野淳一さん(63)も「図書館や学校の本の充実に尽くし、北見の文化に大きな貢献をしてきたのに」と声を落とした。福村書店で予約済みだった本やインターネット通販で受け取り予定だった本は同店に引き継がれる。
 また、福村書店は市内42小中学校のうち20校分の教科書も取り扱っていた。市教委学校教育課は「9月からの後期分については教科書センターから直接送ってもらうことを検討している。来年度以降、これだけの量を扱ってくれる書店があるのか、今後考えなくてはならない」としている。
(写真:事業停止を知らせる張り紙が張られた福村書店「北の書籍館」)

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福村書店倒産
マチの本屋 苦境続く
大型店、ネットが挟み撃ち

 北見の老舗、福村書店が6日、自己破産を申請する方針となり、道内の書店業界に衝撃が広がった。福村書店は地元文芸誌なども扱う地域文化の発信基地だったが、その破綻で、大型書店とインターネット通販との間で地域の中小書店の苦境が続いていることが浮かび上がった。(2面参照)

 道内では「メガ書店」と呼ばれる店舗面積1千坪(3300平方メートル)規模の書店の開店が相次ぐ。2008年以降、リラィアブル(釧路)とジュンク堂書店(神戸)が札幌、旭川で計3店を開店。10月にはリラィアブルの「コーチャンフォー北見店」が開店予定だ。
 メガ書店は100万冊を超す点数が売り。「あちこちの店を探し回らなくても本が見つかる」と、強い集客力を持つ。勢いを増すネット書店も中小の驚異となっている。楽天は「書籍の売り上げは他の物販より伸びている」(広報)と言う。
 札幌の書店関係者は「地方の消費者ほど、話題の本や専門書を買う際に、地元では売っていないと考えてネットで注文する」。別の関係者は「メガ書店やネット通販がある中、地方の中小書店は工夫をしない限り生き残れない。例えば書店周辺の住民に高齢者が多いなら、文字の大きい書籍や雑誌が好まれるので、常に品ぞろえの見直しが必要」と話す。
 北海道書店商業組合の久住邦晴理事長(札幌・くすみ書房社長)は「町の本屋は、ネット書店や大型店のほか、コンビニエンスストアや(新品に近い本を買い取って安く売る)新古書店を加えた四つの驚異にさらされている。将来が見通せないので跡を継がせられず、道内各地で次々と老舗書店が閉店してきた」と嘆く。
 一方で、地域の住民の熱意が書店誘致につながった例も。三省堂書店(東京)は24日に留萌市内で道内5店目の店舗を開く。市内唯一の書店が倒産したのを受け、主婦らが誘致運動を展開。三省堂書店の会員になる協力者2500人を集めたことで出展が決まった。三省堂書店札幌店の横内正広店長は「近郊を含めた人口は4万人で経営は簡単ではないが、地元の情熱に答えたい」と話している。
(写真:閉店を知らせる張り紙が出された福村書店「北の書籍館」〜北海道新聞7月7日朝刊)

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各地の書店が経営危機にあるとは聞いていたけど、福村書店が無くなるとはおもわなかった。(ノ_・。)コンビニで雑誌を買うことはほとんどないけど、Amazonならたびたび利用していた。でも考えてみれば、限定本かよほどの希少本でない限りAmazonで購入できてマチの書店で手に入らない書籍はないんだよね。マチの書店になければ注文すればちゃんと入荷します。もっと地元の書店を利用すればよかったヒーン(TmT)ウゥゥ・・・結局、福村書店で最後に購入したのは佐藤泰志の『海炭市叙景』だった

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あたりまえだけど、お客さんがいません。。

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パンダさんも泣いてます。

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「伝書鳩」とは地元のフリーペーパー。

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(:_;)

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深夜零時までやってたんだね。そんなことも知らないで。。気づいたときにはいつも遅いのさ。

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さようなら福村書店。ありがとう福村書店。

子供のころから親しんでいた福村書店が長年の営業に終止符を打った一方で、新たに北見に進出した書店がある。今日始めて知ったんだけど、ひかりや書店(網走本店?)が、ショッピングモールのメッセ(北見市中央三輪5丁目423番地5)に支店を出したようです。ここにはBOOK OFFがあるんだけど、同じ店内の右半分がBOOK OFF、左半分がひかりや書店という住み分けになった模様。結構広めのスペースなので、かなりの品揃え。ということはこの店にいけば、あるタイトルで新品と中古を選択できるわけか。書店がダメになった最大の理由は再販制度にあると僕は考えているので、この試みはおもしろい。

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今日も30度ちかくまで気温が上がったけど、このクソ暑いなかダークスーツの偉いおじさんたちが店の前でじゃま臭いです(かつウットーしい)。書籍販売業界にもスーパークールビズが必要。

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なにかイベントをやっているようで、ちびっ子たちが吸い込まれるように店内に入っていきます。ひかりや書店で本を買うと景品が当るのかぁ。BOOK OFFでは全品半額セール(一部除外)のキャンペーンで集客を図ります。
ちょうど良い機会です。まえから読みたかった文庫本をまとめ買いしました。レジ操作で一冊ごとに「半額」の計算をやっているようで、いつもの倍、キーを打たなくてはならないみたい。なんだか大変そう。ある金額以上でサービスポイントが付くらしく、50円の割引券をもらいました。ありがとう♪(o ̄∇ ̄)/
さっそく追加で100円の文庫をもう3冊選びましたが……

「もらったばかりの割引券、もう使います」
「かしこまりました。カチャカチャ、カチャチャチャカチャチャ、カチャチャ、カチャチャチャ、カチャチャチャカチャ、カチャカチャ、カチャチャチャカチャ、カチャチャ、カチャチャチャ、カチャチャチャカチャ、カチャチャ、カチャチャチャ、カチャチャチャカチャ、カチャ、カチャカチャ、カチャチャチャカチャ〜」
「(まるで円周率を計算してるようだ。そんなにレジのボタン押すかなぁ。100円の文庫本が3冊で、それが半額だから、全部で150円で、50円の割引券をだしたから……)」
「チーン、はい。では85円になります」
「∑(ノ▼ο▼)ノ オォオォオオオ!!」
メモを見ながらレジを打っていた店員さん、じつは複雑な計算をしてたんだなぁ〜。

ところで、本そのものが売れないわけではなさそうなので、あくまでも消費者が利便性を追求した結果、地域の書店経営が難しくなってきたのかも知れない。でも、出向いた書店で偶然手にした一冊との運命の出会いがきっとあるとロマンチストの僕は信じています。たとえ散歩の途中でも「なにかが起こりそうな予感」がある限り、人は本屋に足を運ぶのではないか。ぜひ新品で手に入れたい本(末長く手元に置いておく)。取り合えず読めればいい本(読んだあと人にあげるか、 売りさばく)。図書館で間に合う本(途中で飽きたら棚に戻す)。僕の場合はこの3パターン。それに合わせて(TPO?)、上手に書店を使い分けていきましょう。

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福村書店のメンバーズカード、記念にとっておこ。地元文芸誌「文芸北見」といえば福村書店が積極的に販売を展開していたイメージがあって、おそらくそれは間違いではないはずだけど、同じように力を入れて取り扱う店があるだろうか。このまま文化の下火につながるならなんともサビしい。そして、まだ僕の手元にたくさん残ってるんスけど、これ、どうやってさばこうかな〜。誰か買って!(*´∀人)

福村書店
http://www.books-fukumura.co.jp/

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2011年4月28日 (木曜日)

芥川賞にも三島賞にも縁がなかった作家・佐藤泰志を3冊揃える。

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「移動動物園」「海炭市叙景(かいたんしじょけい)」「そこのみにて光輝く」

 本の購入には一冊一冊想い出がある。
「移動動物園」は北見市のGEOで手に入れた。一見して見当たらなかったので、カウンターで伝票整理をしていた若い店員に尋ねたが、お兄ちゃんは自分の作業を中断されたせいか無愛想だった。それでも僕の要望した「現在入手可能な佐藤泰志の全著作」を検索端末で丁寧に調べてくれた。僕が知らなかったタイトルも発売されているようで、質問してみたが、そのたびに彼はデータを詳細に読み上げる。現在店にあるのは「移動動物園」だけのようだ。お兄ちゃんはするりカウンターを抜け出て売り場まで僕を案内すると、平積みになったいちばん上を手渡してくれた。立ち読みを逃れて痛みの少ない上から3番目をすくい取る悪い癖が僕にはあるが、一冊を売り上げるため時間を割いてくれた彼の好意がうれしかったので、渡されたそのままを持ってレジへ向う。外見で人は判断できないが、小説など読みそうにない若者が渡してくれた「移動動物園」。読み終えたあとも自室の書棚で背表紙を覗かせるだろう。
 実はその直前、別の書店をあたっていた。全国最大規模を謳う大型チェーン店で、今秋北見市の東側に本格店をオープン予定の、現在はTSUTAYA北見店の一角で営業するその店なら何でもあるだろうと当たりをつけていたのだ。売り場マネージャーの風格を持ったおじさんは、在庫データを調べることもなく「ウチはあいうえおで並んでいる」とひとこと呟き、『サ行』を一瞥しただけで「品切れ中」を宣言してしまった。ずいぶん諦めのはやいおじさんだ。ひとり残された僕は書架の隅から隅までもういちど丹念に目で追ったが、やはりない。仕方がないのでレンタルDVDの新入荷でもチェックして帰ろうと視線を落とした先に、平台の上で山積みとなった「海炭市叙景」をみつけた。だがこのタイトルなら持っている。市内の老舗・福村書店で手に入れていた。結局、全国有数の大型店と佐藤とは縁がなかったのだろう。
 Amazonを使えば自宅で手軽に購入できるが、消費税をとる同店にいささか否定的な僕は、佐藤のような作家だからこそ足を使って求めたい、つまらないこだわりがあった。
 GEOのお兄ちゃんが教えてくれた情報によると、もう一冊「そこのみにて光輝く」が残っている。先に巡った二店に無いことは分かっていたので、目指すは老舗だ。
『伝説の作家・佐藤泰志の《最新刊》』を手にして店を出たとき、冷え込みが戻ったまちに、陽が大きく傾いていた。

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 市内では上映が終わった映画『海炭市叙景』。その最終日、劇場の責任者にお願いして宣伝用のポスターを分けてもらった。さっそくパネルに収めて部屋に飾り、朝晩ながめている。
 今年の日本は前半から大きな変革の年となった。
 函館山に見下ろされて執筆に専念する。

「わたしたちは、あの場所に戻るのだ」

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佐藤泰志/ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/佐藤泰志
佐藤泰志/Amazon.co.jp
http://amzn.to/gWYefi
映画「海炭市叙景」公式サイト
http://www.kaitanshi.com/ 
映画『海炭市叙景』を観た。破滅と再生の物語。久しぶりにみるヘビー級の邦画だった。
http://purplecoelacanth.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-bd4a.html

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2011年2月21日 (月曜日)

北海道新聞朝刊コラム・朝の食卓「昨年の今ごろ、失業した若い兄妹が初日の出を見るために山に登るという映画の一場面の撮影に同行して、深夜、函館山に上った。映画とは今、全国で漸次公開中の『海炭市叙景』」

街の灯り 青井元子

 昨年の今ごろ、失業した若い兄妹が初日の出を見るために山に登るという映画の一場面の撮影に同行して、深夜、函館山に上った。映画とは今、全国で漸次公開中の「海炭市叙景」。函館出身の作家・佐藤泰志の原作で、舞台となる架空の北の街「海炭市」のモデルは函館である。撮影の時、山頂から眺めた真夜中の街は、灯りも少なく、ひっそりしていた。
 先日、函館は「夜景の印象的な街」の第1位に選ばれたそうだ。両側を海に挟まれて扇型に広がる光の絨毯は、確かに美しい。澄んだ空気の中でさまざまな色にまたたいている灯り。その一つ一つの下には人々の営みがある。映画に描かれていたように、明日からどうやって暮らそうと途方にくれる若者や、けんかばかりしている夫婦、猫を飼っている独り暮らしの老婆がいたりする。そういう人々のともす灯りが、この街の夜を輝かせている。
 佐藤泰志はエッセーの中で、帰省するたびに函館山に登り、街を見下ろした時、「どうしようもなく、そうであるほかない形で街に生きている人々を、無性に書きたい思いに突き動かされる」と書いている。
 最近、この映画を見た高校時代の友人からメールが来た。「なぜだか、亡くなった父や母とのいろいろなことが思い出されました。本を読んでからもう一度見ます」とあった。(バー「杉の子」店主・函館)

 ☆゚・:,。*:..。o○☆*:゚・:,。*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:゚・:,。

佐藤泰志/ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/佐藤泰志
佐藤泰志/Amazon.co.jp
http://amzn.to/gWYefi
映画「海炭市叙景」公式サイト
http://www.kaitanshi.com/
函館山ロープウェイ
http://www.334.co.jp/jpn/gallery/cat86/000208.php
Doshin web どうしんウェブ
http://www.hokkaido-np.co.jp/

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平成23年2月12日北海道新聞朝刊《ひと語り もの語り》映画『海炭市叙景』原作 故佐藤泰志の長女・朝海さん「家族が一つになれた」

小説家の父 今は誇り

 酒に溺れ、家族に暴力を振るう。12歳の時に死別した父の記憶はずっと封印してきた。父の名は佐藤泰志(1949〜90年)。芥川賞候補に5度挙がりながら自殺した函館出身の小説家だ。20年の歳月を経て、家族のきずなを取り戻す時が来た。遺作「海炭市叙景」の映画化や絶版作品の相次ぐ復刊をきっかけに、娘の木暮朝海《あさみ》さん(32)=東京都在住=は亡父の存在を強く感じている。「お父さんが生き返ったみたいだ」(函館報道部 酒井聡平)

ガラス細工の心

 朝海さんは3人きょうだいの長女。東京都国分寺市で過ごした子供のころ、家は貧しかった。6畳、4畳半の2部屋に家族5人で暮らした。
 平屋の2軒長屋に隣接した狭いプレハブ小屋が父の仕事場だった。父は体を丸めて居間の窓から小屋に入り、原稿に向かった。執筆中は神経をとがらせ、テレビをつけただけでも怒鳴られた。
 作家の心はガラス細工のようにもろかった。新鋭作家として注目され、芥川賞にノミネートされたが、落選し続けた。自律神経失調症に悩み、酒を飲むと母や弟を殴った。
 朝海さんが学校から帰宅し最初に母に言う言葉は「お父さんはどう」。母が表情を曇らせると、寝室に逃げた。ふすま越しに聞こえる怒声に息をひそめた。
 父の自殺前夜。酒に酔った父と母の口論が始まった。翌朝、父の姿はなく母が泣いていた。父はもう帰らないと直感した。「父が死ぬか家族が死ぬか。そう思っていたから父の死でほっとした」。死後ずっと家族の間で父の話はタブーだった。
 「父親の職業を聞かれたら小説家と答えなさい」。子供のころ、父から言い聞かされた。でも、私の父は小説家です、と胸を張って言えたことは一度もない。父の作品も読んだことはなかった。

磨き抜いた言葉

 転機は4年前。小説の読み巧者たちの熱い支持で佐藤の再評価が進んだ。代表作を集めた作品集が東京の出版社クレインから出版された。記憶の底に押し込んでいた父が、本という形で現れた。
 作品を初めて読んでみた。青春のまばゆい群像、地方都市の人々の暮らし…。どの作品も一字一句磨き抜いた言葉で描かれていた。「父は人生をかけ、魂を削って書いていた。小説が人生のすべてだったんだ」
 「海炭市—」の映画化や復刊は、父と家族のきずなを再確認するきっかけになった。昨年11月下旬、静岡市で行われた弟の結婚式。弟は映画のチラシと原作本を式場に持参し、「父の本です。良ければ読んでください」と参列者に配った。「せっかくだし、宣伝しようと思ってさ」。弟の言葉を聞き、思いが込み上げた。「家族がやっと一つになれた」
 主婦の朝海さんは今振り返ると、「父が生きていれば」と思ったことが一度だけあった。大学卒業後の進路に悩んでいた22歳のときだ。作品の中にその答えがある気がして古書店を回った。だが、本は見つからず、悲しさだけが残った。
 あれから10年。「海炭市—」に続き、「移動動物園」など4作品が4月以降、小学館などから相次いで復刊される。父の本が日本中の書店に並ぶ。そのことがうれしくてならない。「本屋に行けばお父さんと出会える。本が増えてくれたら、会える機会も増えそう」。父とともに歩む人生が、これから始まる。

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【写真】上:2歳の誕生日を迎えた朝海さんを笑顔でみつめる佐藤泰志=1980年。下:生前の写真を前に「再び父に命を吹き込んでくれた人たちに感謝しています」と語る木暮朝海さん

佐藤泰志/ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/佐藤泰志
佐藤泰志/Amazon.co.jp
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映画「海炭市叙景」公式サイト
http://www.kaitanshi.com/
Doshin web どうしんウェブ
http://www.hokkaido-np.co.jp/

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2010年12月29日 (水曜日)

「文芸北見」第41号発売。僕も「おやすみコトミン」を書きましたんで、よろしく♪(o ̄∇ ̄)/

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文芸北見、第41号発売しましたヾ(●⌒∇⌒●)ノ
表紙は尖閣沖で日本の巡視船に体当たりする中国漁船……ではなく、山田勝美さんの「河岸の捕鯨船」(オホーツク美術展)。すばらしい! 日本は頭の先からつま先まで余すことなくクジラを有効活用します。日本の文化、捕鯨!
文芸北見だけど全国の本屋さん…には置いてないと思うので、福村書店(北見市)、ブックキャビン(北見市)、ひかり屋書店(美幌町)、フジヤ書店(北見ポスフール・網走店)などでお買い求め下さい。また、文芸北見発刊実行委員会(電話番号0157-22-0099)でも直接販売している(と思う)。
一冊1、250円で好評発売中!
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じゃじゃーん。「おやすみコトミン」ですよ、みなさん。
前回40号では「ニューパーク」を載せてもらったけど、イラストカットが微妙だったので注文をつけたところ、自分で写真を用意することになりました。

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「おやすみコトミン」、「おやすみコトミン」をよろしく。
え? 聞いたことがあるタイトル? 少し関係があるかもね。うふふ。

年内にもういちど更新する予定だけど、もしかすると「良いお年を」かも。
世界中に花の種と希望を。なによりも俺の幸せを。
ことしもありがトンd(´ε`*d)

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2010年10月16日 (土曜日)

『海炭市叙景』新聞広告 2010年10月11日 北海道新聞朝刊

海に囲まれた小さな町で育まれる、
ひとびとの絶望と希望。

函館をモデルにした架空の街「海炭市」で
ひそやかに生きる「普通の人々」の日常、絶望、そして希望。
著者の故郷、函館市で撮影された映画の原作!

かいたんしじょけい
海炭市叙景


佐藤泰志

佐藤泰志の遺作 待望の文庫化!
好評発売中! 定価650円(税込)小学館文庫
ISBN 978-4-09-408556-3

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佐藤泰志/Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E8%97%A4%E6%B3%B0%E5%BF%97
佐藤泰志『海炭市叙景』(小学館文庫)緊急入手!
http://purplecoelacanth.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-7b43.html
函館舞台「海炭市叙景」 東京国際映画祭コンペに出品
http://purplecoelacanth.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-6b38.html
どうしんウェブ
http://www.hokkaido-np.co.jp/

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2010年10月 8日 (金曜日)

佐藤泰志『海炭市叙景』(小学館文庫)緊急入手!

ャタ━ヾ(●゚∀゚●)ノ━!!
佐藤泰志の小説『海炭市叙景』買っちゃったー!
みんなも急いで本屋さんにレッツラゴー!

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━■文庫より■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 海に囲まれた地方都市「海炭市」に生きる「普通のひとびと」たちが織りなす十八の人生。炭坑を解雇された青年とその妹、首都から故郷に戻った若夫婦、家庭に問題を抱えるガス店の若社長、あと二年で定年を迎える路面電車運転手、職業訓練校に通う中年男、競馬にいれこむサラリーマン、妻との不和に悩むプラネタリウム職員、海炭市の別荘に滞在する青年…。季節は冬、春、夏。北国の雪、風、淡い光、海の匂いと共に淡々と綴られる、ひとびとの悩み、苦しみ、悲しみ、喜び、絶望そして希望。才能を高く評価されながら自死を遂げた作家の幻の遺作が、待望の文庫化。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
佐藤泰志(さとう やすし)
小説家。一九四九年北海道函館市生。
國學院大學哲学科卒。八一年「きみの鳥はうたえる」が第八六回芥川賞候補となる。以後、八八回、八九回、九〇回、九三回の芥川賞候補作に選ばれる。九〇年一〇月一〇日自殺。享年四一。著『きみの鳥はうたえる』『そこのみにて光輝く』『黄金の服』『移動動物園』『大きなハードルと小さなハードル』『海炭市叙景』。
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★☆★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『海に囲まれた/小さな町で育まれる/ひとびとの/絶望と希望。』
12月上旬公開映画原作(東京・ユーロスペース、以降全国順次公開)
出演 加瀬亮 谷村美月 小林薫 他
第23回東京国際映画祭コンペティション正式出品作
(C)2010 佐藤泰志/映画「海炭市叙景」製作委員会

海炭市叙景
監督 熊切和嘉
原作 佐藤泰志
音楽 ジム・オルーク
製作 映画「海炭市叙景」製作実行委員会
11月27日〜函館・札幌・帯広・苫小牧・室蘭・北見・浦川で先行上映
12月上旬〜東京渋谷・ユーロスペース
以降全国で順次公開予定
(帯より)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆

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2010年9月25日 (土曜日)

伝説の作家守った小さな町 故サリンジャー氏 晩年過ごした米国・コーニッシュ

 「ライ麦畑でつかまえて」で世界的な名声を博した後、米東部の田舎町に身を隠したまま1月に91歳で死去した米作家J・D・サリンジャー氏。どのような暮らしぶりで、最期の時を迎えたのか。半世紀にわたって暮らしたニューハンプシャー州コーニッシュで「伝説の作家」の晩年を追った。

質素な生活
 「物静かで自分を飾らない人だった」。コーニッシュで雑貨店を営むマイク・アッカーマンさん(43)がサリンジャー氏と初めて出会ったのは、郵便配達人をしていた約15年前のことだった。
 郵便物を届けに行くと作家が窓から顔をのぞかせた。「こんにちは。サリンジャーさん」と声を掛けると「いつもありがとう」。その後、顔を合わせるたびに話をするように。「礼儀正しいだけでなく、心の温かい人だと感じた」
 コーニッシュはバーモント州に近い人口約1700人の小さな町。作家は1953年ごろにニューヨークから移り住み、以後、町を出ることはほとんどなかった。
 暮らしぶりは質素で、外食をするときも地元だった。車で15分ぐらいのバーモント州ウィンザーにある簡易食堂がお気に入り。ハンバーガーセットが約6ドル(約500円)の典型的な田舎町の食堂だ。
 「彼は週2回ぐらい必ず朝9時から10時の間に朝食を取りに来たわね。来ると必ずこの席に座った」と従業員のジェイミー・オッキントンさん(32)。ほかの客と話をすることはほとんどなかったが、いつも温かく迎えられていたという。

奉仕活動も
 ニューヨーク出身のサリンジャー氏は、地域社会に溶け込もうとボランティアや地域活動に積極的だった。60、70年代にはボーイスカウトの隊長をしていたことも。夫人も多くのボランティアにかかわっていた。
 ハートランド第1組合教会のルシア・ジャクソン牧師は「サリンジャーさんは厭世的な人でも世捨て人でもなかった」という。夫妻は教会で毎週土曜夜に行われる夕食会の常連で、作家は特にローストビーフが好きだった。「いつも最前列にいて、ほかの信者との会話を楽しんでいた。給仕をする少年らへのチップも多めでした」
 「町の人たちはジェリー(サリンジャー氏)と家族を守った」と話すのは額縁商デービッド・パットナムさん(59)。20年ほど前に作家が小さな額縁の仕事を頼みに来たのを覚えている。「物静かな人で、名乗られるまで彼と分らなかった」
 ニューイングランド北部には他人のプライバシーを尊重する伝統があり、サリンジャー氏がそれを知って移り住んできたのだろうと、パットナムさんは言う。アッカーマンさんも「ジェリーはいつも感謝の念を示してくれた。ボランティアも地域社会へのお礼のつもりだったのだろう」。
 実際、小さな町は秘密を守り続けた。サリンジャー氏が通った、プレインフィールドにある図書館のナンシー・ノーウオーク司書は、作家が図書館に来ても「ほかの人がいれば名前を呼ばないように気を付けていた」と話す。
 作家の死が報じられると、町には北米各地からメディアが押しかけた。夫人はすぐに姿を隠し、約1カ月後に戻ってきて知り合いにお礼を言って回ったという。
 町では作家の自宅の場所は今なお秘密だ。町の中心部から山道を走ること約30分。ようやく探し当てた家は高原の別荘のようで、森の中に修繕の音を響かせていた。
 (コーニッシュ共同)

「ライ麦畑」続編は? 未発表原稿 注目集まる
 世界中で読みつがれている青春小説「ライ麦畑でつかまえて」の続編はあるのか——。サリンジャー氏が書き残したとみられる未発表原稿に注目が集まっている。遺族は沈黙を守っているが、“伝説の作家”の遺作は「ベストセラー間違いなし」(米メディア)だけに、発表されれば大きな話題になりそうだ。
 「毎日朝6時から正午まで書いています」「小説2冊分の草稿ができあがりました」。今年3月にニューヨークの美術館モルガン・ライブラリーが公表したサリンジャー氏の未公開書簡は、関係者を驚かせた。同氏が執筆を続けているとの証言はあったが、作家本人が認めたものは事実上、初めてだったからだ。
 未発表原稿については「15か16の作品が完成している」と本人から聞いたという隣人の証言や、きちんと分類された原稿を見たとの娘の話などがあり、かなりの分量の原稿が保管されているのは確実とみられる。
 寡作で知られるサリンジャー氏は1965年の「ハプワース16、一九二四」以降、新作を発表していない。出版界が期待するのは絶大な人気を誇る「ライ麦畑」の続編だが、実際には作家自身がこだわった、グラース家の7人きょうだいの生き方を描いた連作の一部の可能性が高い。
 関係者の間には「じっくり書き込まれた素晴らしい作品に違いない」との意見もある一方、サリンジャー氏の後期の作品には難解で哲学的な内容のものが多く、未発表原稿にそれほど期待はできないとの見方もある。
 (コーニッシュ共同)

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北海道新聞2010年9月8日夕刊

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サリンジャー氏が通った簡易食堂。左側の女性が座っている席にいつも腰掛けた(共同)

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コーニッシュの森の中にひっそりとたたずむサリンジャー氏の自宅(共同)

攻殻機動隊×サリンジャー×アオイ×トグサ
http://purplecoelacanth.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-7e20.html

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2010年5月16日 (日曜日)

寄付プログラム「第一回路上文学賞」受賞作品の発表

寄付プログラム「第一回路上文学賞」受賞作品の発表
http://www.bigissue.or.jp/activity/info_10051401.html

「路上文学賞」は全国の路上生活者を対象にした文学賞です。写真集『STREET PEOPLE—路上を生きる85人』の印税をご寄付いただき誕生しました。第1回から沢山の方に応募いただきました。選者は作家の星野智幸さんです。

【文学部門】
(1)正賞 : Oさん 「ココロ/キセキ」
(2)副賞 : Mさん 「3度の殺人事件により守られた神に選ばれた男」
(3)特別賞 : Iさん 「私が桜だったら」

【川柳部門】
(1)正賞 : Mさん
(2)副賞 : Iさん
(3)特別賞(3名) : Hさん、Swさん、kさん、Sさん

【路上雨宿り賞 (5名)(仮称=審査員特別賞)】
Hさん、Tさん、Mさん、Tnさん、Kさん

★ 応募いただいた全作品を小冊子にまとめて配布する予定です
★ 賞金の授与の日時は追ってお知らせいたします

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